今日はクリスマス──否、時計の歴史が動いた日。ゼンマイが刻み続ける“時の力”
- COMPASS 株式会社
- 2025年12月25日
- 読了時間: 4分
今日はクリスマス!
──いいえ☝️、時計の世界では少し違います。
1969年12月25日。
セイコーが世界初のクォーツ式腕時計「アストロン」を発表した日です。
この一日が、時計業界の歴史を大きく変えました。
“クォーツショック”と呼ばれる技術革新の波が世界中を駆け抜け、
多くのメーカーが機械式からクォーツへと移行していきます。
精度も、価格も、構造も――すべてが新時代へ。
しかし、それから半世紀が経った今もなお、
ゼンマイで動く機械式時計は多くの人を魅了し続けています。
電子ではなく、金属の反発力だけで時を刻む――
その仕組みは、まるで生き物のような温もりを感じさせます。
今回は、その機械式時計の心臓部――
ゼンマイと香箱についてお話しします。

時計を動かす<見えないエンジン>
機械式時計が動くための原動力――それがゼンマイ( mainspring )です。
薄く帯状に作られた金属が渦を巻くように収められ、
その外側を覆う円筒形の部品が香箱( barrel )と呼ばれます。
ゼンマイは香箱の中で巻き上げられ、
ほどけるときの反発力で歯車を順に動かして針を回します。
つまり、香箱は“時計のエネルギータンク”であり、同時に“動力を最初に伝える歯車”でもあります。
香箱は「1番車」
香箱は、ゼンマイがほどける力を最初に受け止め、次の歯車へ伝える重要な役割を持っています。
動力を最初に伝える歯車――それが香箱であり、故に「1番車」と呼ばれます。
ここで、勘の良い方ならきっとこう思うはずです。
「ということは、2番車や3番車もあるのでは?」
はい、その通りです☝️。
時計の中では香箱の先に、輪列( gear train )と呼ばれる一連の歯車の流れが存在します。
その詳細は、次回のコラムでじっくり解説します。

ゼンマイは、いつ切れるか分からない
ゼンマイは金属製でありながら、いつ切れるかは予測できません。
金属疲労、潤滑不足、経年変化――原因はさまざま。
巻き上げ時に「パチン」と音を立てて切れることもあれば、
時計が静かに止まり、開けてみたら途中で断裂していた、というケースもあります。
切れる位置によって症状も異なり、
外周や中心で切れれば完全に止まりますが、
中央付近で切れた場合は一部だけ力が伝わり、短時間だけ動くこともあります。

手巻きと自動巻き ― 巻き止まりの違い
🔹 手巻き時計
リューズを手で回してゼンマイを巻き上げるタイプ。
「巻き止まり」を感じたら、そこから無理に巻いてはいけません。
無理に巻くと、ゼンマイがねじ切れます。
🔹 自動巻き時計
腕の動きによってローターが回転し、ゼンマイを自動で巻き上げます。
こちらには巻き止まりがなく、スリップ機構(滑りクラッチ)が働き、
ゼンマイが一杯になると空転して破損を防ぎます。
「ゼンマイ」「全舞」「発条」――表記の話
時計修理の現場では、たまに「ゼンマイ」を「全舞」と表記している資料を見かけます。
本来の漢字表記は「発条」ですが、
古い修理書や伝票などで「全舞」という当て字が使われてきました。
「ゼン=全(すべて)」「マイ=巻(まく)」という音の響きから、
職人たちの間で自然に広まった言葉と言われています。
現在ではほとんどの修理業者がカタカナ表記「ゼンマイ」を使用しており、
COMPASSでもこの表記を採用しています。
職人の視点から
ゼンマイと香箱は、時計の動力を司る最も重要なコンビです。
COMPASSでは、ゼンマイを単に交換するのではなく、
「なぜ切れたのか」「香箱内部でどう力が伝わっているのか」までを確認し、
最適な整備を行います。
見えない部分の精度こそが、時計の寿命を大きく左右する――
それが、私たちが一番大切にしている考え方です。
💡まとめ
ゼンマイと香箱は、時計の動力を生み出す心臓部。
見えない部分のわずかな不具合が、やがて大きなトラブルに繋がることもあります。
COMPASSでは、一級時計修理技能士が一つひとつの時計を丁寧に点検・整備し、
ゼンマイや香箱の状態を正確に見極めて修理を行っています。
「最近持続時間が短くなった」「ゼンマイを巻いても動かない」
そんな症状がある場合は、ぜひお気軽にご相談ください。
📩 修理やお見積りのご依頼は
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オンライン対応で全国どこからでもご依頼可能です。



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